ネタバレなしで語りたい。
今作はホラー映画ではないが、あまりにも怖かったので、書きたくなってしまった。
「廃用身」とは、脳梗塞などにより麻痺して動かなくなり、回復の見込みもない四肢のことである。
もっともこれは劇中で使用される造語であり、現実には存在しない。
この廃用身を切断すれば、老人介護の負担は軽減され、さらに残された器官の機能も向上する可能性がある。老人デイケアを営む医師の漆原糾は、この画期的な治療法に介護問題の希望を見出すのだが……
という話である。
要らなくなった人間の四肢を切断して介護を効率化しよう。という話であるが、原作小説が二十年も前に書かれたというのだから驚きだ。
人生で初めて映画を観る前に原作小説を読んだのだが、一気に読み切ってしまうほど面白かった。
個人的には小説の方が面白かった。
介護の辛さ、老いることの辛さ、病気や怪我の辛さ、それがやがて自分の身にも起こりうる辛さ
いや恐ろしさが……
文章からじわじわと侵食するように身に染みてきて、まるで呪いにかかったようだった。
何より読みやすいのが良い。事前に読んでおいて良かった。
老人の手足を切断する。
決して悪趣味なストーリーというわけではなく、誰にでも訪れる「老い」と「病気」の恐怖を圧倒的なリアリティで描いている所が良い。
「廃用身」の切断治療の例を、劇中ではまるで実際にあった事件のように書いてあるので、なおさら没入して読めてしまう。
読み進めるほどに「この人達に一体どんな恐ろしい結末が待っているのか」と、不吉な想像が止まらなくなる。
怖い。そのどれもが容易に想像できてしまうし、それ以上に悲惨な結末になる。
映画版も素晴らしかった。
余計な原作改変もなく、淡々と陰鬱な雰囲気で物語が進んでいく
俳優陣の演技も良い。喜びも悲しみもすべてがなにか無機質に映っている。常に不安が漂っているような嫌な雰囲気
それにオーバーなリアクションもセリフも演出も無い。淡々と不吉な日常が続いていき、その不吉さがどんどん増幅して、最後は破裂する。
そんな感じ
やはり人体も映画も余計なものは切断する方が良いのかもしれない
ラストは原作よりも、ある意味希望があるように描かれていたが、そこも逆に良かった。
普段怪獣や幽霊やサメが出てくるような映画ばかり観ている私だが、本当に「観てよかった」と思える作品であった。
介護崩壊は今後必ずやってくるので、皆さんにも是非見てもらいたいと思う。そして想像してみてほしい。最悪の未来とその時の選択肢を
私も持病を持っているので、老後はどうなるかわからない。
もしかしたら身体が動かなくなったりして、廃用身を切断することになるかも……
いや、
そもそも私の体なら、そんなに長生きすることもないのだから老後の心配をすることもないのか……
初めて自分の寿命が短いことにメリットを見いだせた。
なんだ良かった〜