ある中学校には、長年語り継がれている奇妙な噂がありました。
夜の12時ちょうどに誰もいない体育館の前を通ると、「ズシン……ズシン……」と、地鳴りのような重い足音が聞こえてくるというのです。
その学校では、昔ガンプラブームの時代に、ガンプラ作りが大好きな「タカシくん」という生徒がいました。
タカシくんは特にビグ・ザムが大お気に入りで、お小遣いを貯めて大きなビグ・ザムのプラモデルを買い、毎日大切に組み立てていました。
しかし、完成間近のある放課後、クラスの不良グループにからかわれ、大事なビグ・ザムを体育館のステージ裏で踏み潰されて壊されてしまったのです。
タカシくんは泣きながら散らばったパーツを集めましたが、先端のパーツや長い脚の関節がいくつか見つかりませんでした。彼は失意のまま転校してしまいましたが、それ以来、夜の体育館で異変が起きるようになったと言われています。
ある日の放課後、生徒会の作業で遅くなった2年生のケントとダイスケは、暗くなった体育館の横を通って帰ろうとしていました。
すると、固く閉ざされた体育館の重い扉の向こうから、かすかな音が聞こえてきました。
「ズシン……ズシン……」
床板がしなるような、凄まじい重量感のある足音です。
「え……誰かバスケの練習でもしてんの……?」
二人は怖々、体育館の扉の隙間から中を覗き込みました。
静まり返った暗闇の体育館。ステージの前に、月光に照らされた「巨大な影」が浮かび上がっていました。
それは、天井に届きそうなほど巨大な「2本足の怪物」でした。
丸く巨大な胴体に、長い2本の脚。まさに、あのビグ・ザムのシルエットそのものでした。
しかし、よく見るとその姿はプラスチックではありません。
体育館にあった跳び箱、パイプ椅子、バスケットボール、そして壊れた用具たちが怪しい力でドロドロと合体し、巨大なビグ・ザムの形を成していたのです。
「な、なんだよあれ……!」
二人が息をのんだ瞬間、ビグ・ザムの胴体の中央にある大きな丸い部分(メガ粒子砲の発射口)が、ヌッと赤い「巨大な一つ目」に変わりました。
ギロリとドアの隙間を見下ろしたビグ・ザム(のようなもの)は、重い口を開くように、激しい金属音のような音で鳴き響きました。
『……やらせはせん……やらせはせんぞ……ッ!』
ドジャアァァン!という地鳴りと共に、ビグ・ザムがドアに向かって一歩を踏み出しました。
二人は「うわあああぁぁぁ!」と悲鳴を上げて校門まで猛ダッシュし、命からがら逃げ帰りました。
翌朝、恐る恐る体育館を確認すると、昨夜の怪物は影も形もありませんでした。
ただ、ステージの床には、大型トラックでも踏みつけたかのような巨大な鳥の足跡のような凹みがくっきりと残っていたそうです。
そして体育館の隅には、古びたプラスチックの小さなパーツ——144分の1スケールの「ビグ・ザムの爪」がひとつだけ、ぽつんと落ちていたと言われています。
タカシくんの念が宿ったのか、それともドズル中将の執念が学校の体育館に呼び寄せられてしまったのか……今でも夜の体育館からは、時折「やらせはせん……」という低い呟きが聞こえるとか、聞こえないとか。